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アダルトゲーム好きにお勧めしたいノベライズとエロゲライターのラノベ



 

 先日DMMのアダルトゲーム50%オフで「CARNIVAL」が半額だったことにビックリしまして、思わずツイートしたら何だかんだ瀬戸口作品の話で盛り上がった時に気づいたのですが、意外とエロゲライターの書いた一般向けラノベやノベライズって紹介する機会がないんですよね。

 僕もそこまで好んで集めていた訳ではないですが、自分の本棚から好きなアダルトゲームのノベライズやエロゲライターのラノベを集めてみました。

 

 

■アダルトゲームのノベライズ作品

 

 

CARNIVAL 

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「世界は残酷で恐ろしいものかもしれないけれど、とても美しい。思えば、そんなこと、僕らは最初から知っていたはずなんだ」殺人の容疑をかけられ護送中のパトカーから逃亡したマナブ。そんな彼と一緒に失踪する道を選んだリサ。あれから、七年―。二人は行方不明となりその安否も確認できないまま、七年の月日が流れた。ある日、リサの弟・洋一に一本の電話がかかってくる。姉・リサからの思いがけない電話だった。彼女たちの消息を追い、七年前の事件について調べ始める洋一。浮浪少女・サオリとともに、事件の真相に迫っていくが…。リサ、マナブの行方は?事件に翻弄されたイズミ、エイミたちのその後は?洋一が新たに見つけた希望の光とは…。

 

  まずは何と言っても先ほど言及した「CARNIVAL」。

 この一冊の何が素晴らしいかと言うと、まず何と言っても本編後のお話ということ。

 アダルトゲームのノベライズは基本的に本編の内容をなぞると再構成する形を取るので、本編後の主人公たちの様子を見る事ができるのはファンとして嬉しいですよね。

 そして引用した自分のツイートでも書きましたが、ノベライズ版での主人公の性癖。

 死体でしか昂奮しない主人公と、その主人公を勃起させるためアダルトグッズを大量に用意してくるホームレスの女の子。こんな狂ったお話が瀬戸口先生以外に書ける訳ないです。狂気と猟奇と異常性癖という、アダルトゲーム特有のドロドロとした要素がふんだんに組み込まれています。

 前作の主人公とヒロインの末路が描かれているのも最高ですね。本編と合わせて一人の人間の一生を垣間見ることができる訳です。

 しかし今やプレ値。気になった方はまずは「CARNIVAL」の原作と、後述する瀬戸口先生のラノベの購入をお勧めします。

 

CARNIVAL (二次元ドリームノベルズ)

CARNIVAL (二次元ドリームノベルズ)

 

 

 

ONE~輝く季節へ~②

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泣きそうな空の下。何もない空き地に里村茜は立つ。戻ることのない初めて好きになった人を待つために…。そんな彼女の心を開いた男性、折原浩平。彼のくったくのない笑顔、突飛な行動が閉ざした茜の心を開いていった。だがその浩平までもが茜の前から姿を消そうとする!?98年度最大の話題作「ONE―輝く季節へ」待望の小説化第二弾

 

 続いてお勧めするのは「ONE」のノベライズ2巻。

 このノベライズではONEの里村茜ルートをなぞっていく形で話が進んでいくのですが、決定的に普通のノベライズと違う点は「ヒロイン視点」で進行していく点。

 里村茜視点で物語が進んでいくので、彼女が如何にして主人公に惹かれていき、そして大切な人が「えいえんのせかい」へ導かれることを恐れたかが、本編以上に伝わってきます。

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 アダルトゲームの視点を主人公からヒロインにシフトするだけで一気に物語が少女漫画チックになるのは斬新でした。挿絵も少女漫画風ですね。勿論ONEの里村茜ルート自体の完成度も高く、本書でもその魅力は色褪せません。Key作品が好きならば一度は触れて欲しい一冊です。

 

 

 

 

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代わり映えのない退屈な毎日にうんざりしていた祐介がまきこまれた奇妙な事件の真相は一体!?パソコンゲームで大ヒットしたあのビジュアルノベルシリーズ、待望のノベライズ化。

 Leafの名作ビジュアルノベルのノベライズ版。これも本編の内容をなぞっていく内容なのですが、この本の魅力は何と言っても著者が「ジサツのための101の方法」や「末期、少女病」の金月龍之介先生。

 狂気に魅入られていく登場人物の心理描写は流石の一言。ヒロイン側の視点も加える事で事件の臨場感も増しています。

雫 (ムービックゲームコレクション)

雫 (ムービックゲームコレクション)

 

 

 

 

銀色

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平安時代から現代へと展開する、少女たちのせつないストーリー。色町から逃げ出した名もなき少女と、一人の夜盗。山合の里で出会った、斎宮と領主の息子。帝都で洋食屋を営む、美しい姉妹の物語。そして現代、家業の喫茶店を手伝うヒロインが抱く、誰にも言えない秘密と哀しみ…。どんな願いでもかなえてくれるという「銀の糸」。その不思議な力をめぐる出来事が、時代を越えて一つに繋がってゆく。そのとき、哀しい少女たちに舞い降りた奇跡とは。

 

 ねこねこソフトを一躍有名にした名作のノベライズ。

 本書はノベライズ版のみの特色がある訳ではないですが、単純にあの物語を一冊に纏めた時点で素晴らしい。

 特に人気の高い一章のストーリーと魅力を僅か64ページに詰め込めたのは奇跡的でしょう。一つ一つの話がコンパクトに纏まっているので、ショートストーリー集として愉しんでみるのもアリですね。

 本編の残酷でどこか美しい空気感を余すこと無く表現したという意味では、出色の出来の一冊です。

銀色 (パラダイムノベルス 112)

銀色 (パラダイムノベルス 112)

 

 

 

 

 

 

 

 

■エロゲライターが執筆したラノベなど

 

PSYCHE

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 冒頭で絶賛した瀬戸口先生の別名義作品。

 普通の人には“見えないもの”が見える「僕」は、死んでしまった家族と従姉妹の少女・アイとの生活のなか、失われる思い出をかたちに残すためキャンバスに向かい、絵筆を手にとる。夢と現実の狭間を彷徨いながら、「僕」は次第に「彼ら」に近づいていく…。唐辺葉介の衝撃デビュー作、待望の文庫化。

 アダルトゲーム界隈で養った文章力はライトノベル業界へきても衰えません。むしろヒロインのサービスシーン等の制約がない分、伸び伸びと男主人公の異常性を押し出せています。

 唐辺葉介先生の作品の特徴は何と言っても主人公が異常なこと。この作品の主人公も出だしから「家族の幽霊」を霊視していたり、途中でクスリにハマって現実と虚構の区別がつかなくなってグチャグチャになっていく様子はゾクゾクきます。

 エロゲライターの「アダルトゲーム出身」だからこその表現を知るには、うってつけの一冊。 

PSYCHE (星海社文庫)

PSYCHE (星海社文庫)

 

 

 

左巻キ式ラストリゾート

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目覚めた僕は記憶を無くし、12人の少女たちが暮らす見知らぬ学園にいた。僕の覚醒と時を同じくし、外部を喪失した学園では、トーチイーターと名乗る犯人による強姦事件が連鎖的に起こる。次々と餌食になる少女たち。犯人は誰なのか、この閉鎖された学園は何なのか―そして、僕はいったい誰なのか…。ゼロ年代の衝動の総てを詰め込んだ、異能・海猫沢めろんの伝説的デビュー作が待望の文庫化。鬼ノ仁の新規描き下ろしフルカラーイラスト群を収録し、東浩紀による解説を附した、最終版にして完全版。

 

 ライトノベル三大奇書なんて呼ばれていた一冊。海猫沢めろん先生の作品。

 元は「ぷにふご」というアダルトゲームなので、この本もある意味ではノベライズに当たる……というか元はそうだったのですが、余りに原作との世界観とかけ離れているため新装された今では「ぷにふごEX」の表記は外されました。

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 有名なのは最初の1ページ目。初っ端からレイプ全開ですね。このページはインパクトがデカイのでよく貼られるのですが、

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 個人的には数ページ先にある、レイプ犯の「せいよくは ちんことっても おさまりません」という最低の575から始まる狂った文章こそが、この作品の肝だと思っています。著者の脳味噌をそのままぶち撒けたような最高にFuckな文章は、読んでいるだけで脳と股間にギンギンキます。

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 途中で漫画ページが挟まれるのも元デザイナーだった海猫沢めろん先生作品ならでは。突然有栖川有栖ばりの読者への問いかけが始まります。

 「ノックスの十戒ヴァン・ダインの二十則に囚われず」の台詞なんてアダルトゲーム好きにはバリバリ脳を刺激するいい感じに臭い表現ですよね。

 時折挿入される「アダルトゲーム」と「そのヒロイン」の存在性の話とどんでん返しのオチは、アダルトゲームをこよなく愛する人には堪りません。海猫沢めろん先生が如何にアダルトゲームが好きかが伝わってくる奇書の名に恥じない名作です。

 

 

 

田中ロミオの世相を斬らない

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 ライトノベルというよりはエッセイやコラムに近い気もしますが、アダルトゲーム製作をテーマにした短編集。元はアダルトゲームの連載コラム。

 内容としては本人が筒井康隆の短編集を参考にしたと書いてある通り、「もし未来の世界でアダルトゲームが教科書に載る程名作扱いされていたら」など型破りな発送の短編が続きます。ギルガメッシュ叙事詩の代わりにランスシリーズが語り継がれる世界なんて素敵ですね。

 その中でも僕が好きなのは、老人になったタカ坊夫婦を描く数十年後の「ToHeart2」の話。ロミオ先生自体もお気に入りだそうです。アダルトゲーム好きにしか伝わらないネタ満載というか寧ろそれしかないので、ファンなら思わずニヤけてしまう一冊です。

 

 

 他にも先述した「ONE」の里村茜ルートを担当した久弥直樹先生の「サクラカグラ」や、言わずと知れた王雀孫先生の「始まらない終末戦争と終わってる私らの青春活劇」もお勧めなのですが、両者とも筆が遅いことで有名で続きが出るのが非常に遅い。後者は最近2巻が出ましたが「サクラカグラ」は……。

 両作品ともに往年のアダルトゲーム業界を支えたライターだけあって内容は完璧なんですがね。完結しなくとも魅力的な文章と構成力に触れたいという方にはお勧め。アダルトゲームでは絶対にできない叙述トリックとかニヤけること間違いなしです。

サクラカグラ 1 (星海社FICTIONS)

サクラカグラ 1 (星海社FICTIONS)