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異常な性癖に振り回された吉良吉影の一生



ジョジョ4部アニメ

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 先日、めでたくジョジョアニメ4部が最終回を迎えました。

 ファンとしてアニメで観たかったシーンは、概ね再現されていましたし、OPの凝った演出など、オリジナル面でも個人的には大満足の出来でした。

 さて、4部といえば何と言っても異常な殺人鬼である吉良吉影の存在でしょう。

 吉良さえ居なければ、4部はスタンド使いの日常モノとして扱ってもいい程、のんびりとした作品です。勿論、呑気ながらも奇妙な日々は4部の魅力の大きな一つです。

 しかし、ジョジョの奇妙な冒険という作品は、大きな困難と敵なくしては成立しません。荒木先生は荒木飛呂彦の漫画術」内で、悪のキャラクターの魅力を、「人は誰しも醜い感情を抱えている」「秘められている欲望を、悪のキャラクターが存分と発揮することで、大きなカタルシスを得る」と解説しています。

 吉良吉影は特に「人間の醜い面を描く」傾向を重視された、杜王町、延いては4部という日常に潜みこむ強大な悪意であり倒すべき敵です。

 今回は、そんな吉良吉影の話をしていきます。

荒木飛呂彦の漫画術 (集英社新書)

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吉良吉影の性癖の成り立ち

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 吉良吉影ジョジョ全体の中でも人気が高いキャラです。ラスボスにありがちな崇高な目的や大きな野望が欠如しており、代わりに平穏な人生を望む点が、平凡な読者である我々の共感を呼ぶのでしょう。DIOディアボロとは違った、現実に居てもおかしくない悪意という表現が近いのでしょうか。これは、ラスボスの中で唯一日本人である事も関係しています。

 個人的には、吉良吉影野望でなく拗らせた性癖(正しくは性的嗜好ですが)のみによって、殺人鬼のラスボスとなる結果になった奇妙な運命が大好きです。

・吉良少年の性の芽生え

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 さて、では吉良吉影が一体何が切っ掛けで、殺人鬼として日々を過ごす事になったのでしょうか。

 吉良の生い立ちは「アトム・ハート・ファーザー」の回で追う事ができます。

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 承太郎たちは吉良の住処を特定するも、手がかりとなる情報は何も得られません。分かった情報は「目立たないように目立たないように人生を送ってきた」ことだけ。平凡過ぎる家庭に、仗助をして「特徴のない情報っスね~~~~~~~」と語られていますが、重要なのは承太郎が言う「高い知能と能力を隠すそれが最もトラブルに出くわさないことだと知っている」の部分。

 この承太郎の考察により、吉良吉影少年時代から敢えてトラブルを避ける知能がある事が読み取れます。

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 なぜ吉良少年が、その知能や能力を活かさない人生を選んだのか。

 吉良少年は偶然見つけたモナリザ」の絵の手首の惚れ込み、切り取って部屋に飾ります。時系列的には吉良が見せた初めての異常行動です。初めてモナリザを見た時、吉良が勃起している事実から、「女性の手」が彼の性癖であることがわかります。

 しかし、これが「女性の手フェチ」に目覚めた切っ掛けとは描写されていません。恐らく以前からも自覚はあったのでしょう。性癖による原体験がモナリザの手だけ切り取る行動ではないでしょうか。

 ここからは推測に過ぎませんが、吉良少年は持ち前の知性から、この異常な性癖に振り回され「自分がまともな人生を歩むことはできない」ことを理解しており、ただこの性癖を隠して生活できるよう目立たず平穏な人生を望んだのでは、と性癖を拗らせた人間の一人として想像しています。

  因みにここで吉良の親父が、吉良が21歳の時に亡くなっていることを確認でき、初殺人を行う18歳の頃はまだ存命かつ、息子の「女を殺さずにはいられない」性格を理解しているセリフから、恐らく犯行の後始末などに関与していたことが推測でき、「自分の癖を理解し協力を惜しまない親」の存在が、吉良少年の歪んだ性癖を増長させたのが読み取れます。この親にしてこの子あり。

 

止められない性(さが)

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 吉良の習性に「自分の伸びた爪の長さを記録」することがあります。

 一見「吉良はとにかく異常な人物である」という、キャラ立ちとホラー演出の一つのように思えますが、この習性もまた吉良吉影を知る大きな要素になっております。

  これは極めてどうでもいいツイートです。

 

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  吉良の爪の長さを記録する習性と性癖の関係が、最もよく分かるのがこのシーン。

 ここは、電車内で自分をバカにしたカップルを尾行し、彼氏を始末しながら部屋へと乗り込んでくる場面(この彼氏を爆殺して部屋に上がり込むシーンは、ジョジョ見開き全体でも一番好きです)なのですが、吉良はバカにされた事には一切憤りを感じておらず、ただ「趣味」で彼女を襲いに来たことを話します。

 ここで彼女に無理矢理自分の爪を切らせながら語るセリフが、吉良という人物を表現する上での重要な部分で、「自分の爪がのびるのを止められる人間がいるだろうか?」「いない…誰も爪をのびるのを止める事ができないように…持って生まれた性(さが)というものは誰もおさえることができない」の語りは、正に性癖という性(さが)に振り回される自身そのもの。この後「どうしようもない…困ったものだ…」と続きます。

 

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 よく「平穏な人生を望んでいるくせに殺人はするのか?」と吉良の主張に対して疑問を抱く方を見ます。

 これは、一般人としては正常な感覚なのですが、ここを読めば分かるように、吉良は「殺人すらも自分の性癖を満たす過程の一つであり、その性は止めることができないので仕方ない」と認識しています。

 つまり、吉良にとって殺人は「悪意」と認識しておらず、飽くまで止めることができない「性癖」のために必要な行為としか思っておりません。ここでは「爪が長くなるように止めることができない」と表現されていますが、俗な人間でいえば「自慰行為を我慢することはできない」と同義でしょう。

 一般的な成人男性なら、誰しも制限されていない限り、性欲の解消として自慰を行うでしょう。当然、それは仕方ないことであり、吉良の殺人もその程度の事なので、吉良の中では「殺人を行っていく」事と「植物のように平穏な人生」を望むことは矛盾しません。

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 この女性を殺人し手首だけにするシーンでは、更に重要なセリフの一つに「しゃべらない君は実にカワイイよ……」があります。

  大抵の人間は、自分の性欲を満たす異性に対して「性行為」を重きを置きます。AVやイラストなどで一方的に見た場合も同じですね。アダルトゲームなどでも重要視されるのが「膣内射精」などのシーンがあるかどうかですし。

 しかし、吉良の場合は性行為以上に、美しい女性の手首を好きに扱うことが重要です。寧ろ、それでしか満たされないようにも見えます。実際、性欲が射精で満たされるならここで強姦を行っている筈。

 僕自身、性行為以上に盗撮風シチュの同人誌などで、無自覚な女性を一方的に眺める場面が好きなので(当然それだけでしか満足できない訳ではないです)、この吉良の心情は痛いほど分かります。

 更に、このセリフ一つで吉良が女性の人格にも余り興味がないことも分かり、吉良が33歳にして独身(本当に平穏な人生を歩むなら結婚していてもおかしくない)な理由に納得できると思います。この後、川尻しのぶの存在に惹かれ困惑している場面で、初めて吉良が女性の手首以外の部分に興味を抱く様子が分かります。

 

・理解の共有

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 先程の女性相手でもそうですが、吉良は自分の異常な性癖を他人に語りたがります。

 最終回でも駆けつけた女性に、モナリザで勃起した自分の性体験などを語ります。(ここでは正体を知らせ自分を追い込むことで能力を発動する意味合いもありますが、ここまで話す必要はありません)

 と言っても、そこは慎重な吉良吉影ですから、性癖や正体を語ってもすぐ殺して処理できる状況に限ります。途中、吉良は川尻しのぶ相手に自分の正体を明かしたくて堪らなくなる描写などもありました。ある意味自分の全てである手首への固執を、相手に語るところまで含めて吉良の性癖ではないでしょうか。

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 それが最も裏目にでたのが、川尻早人の企みを全て見破ったシーンです。

 ここで絶望した川尻早人への手土産に、上機嫌になった吉良は自身の正体を大声で明かします。その所為で、仗助たちに見つかってしまい、ラストバトルへ繋がります。

 ここも「慎重である吉良が正体を明かしたのは違和感ある」という意見もよく見かけますが、こう言った暴露したがりな癖がある前提なら、理解できるのではないでしょうか。

 つまり吉良吉影が仗助(川尻早人)に負けたのは、彼が性癖のみに生きた結果ですし、異常性癖というだけでジョジョという作品でも異端のラスボスとして上り詰めた吉良の大きな魅力だと考えています。

 少しでも性欲のある人間なら吉良に共感する部分があるのも事実。例えばどうしても自分が女性を殺さなければいけない性癖があるなら、誰もが実行するために試行錯誤するでしょう。それを踏まえて、人間でなく杜王町という町自体が死因となり吉良を裁いた結着は素晴らしいと思います。

 

終わりに

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 という訳で、何年もアダルトゲームに固執し性欲に生きる人間の一人として、大好きな吉良吉影について語っておきたかった記事でした。

 荒木先生も吉良を気に入っている事は、ジョジョリオンでイケメンかつ異常な性癖も元と較べて控えめな人格者として登場した吉良吉影の存在や、デッドマンズQなどで主役に抜擢していることから窺えます。

  アニメから入ったファンは死刑執行中脱獄進行中内に収録されている、死後の吉良吉影が主役のデッドマンズQは非常にお勧めします。

死刑執行中脱獄進行中 (集英社文庫 あ 41-54)

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