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時代を先取ったメンヘラヒロイン「須磨寺雪緒」の話



 天使のいない12月

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 8月5日は天使のいない12月のヒロインである須磨寺雪緒さんの誕生日です。

 「天使のいない12月」は一般的に鬱ゲー扱いされており、ヒロインもまだメンヘラという概念が膾炙していない時代から、リスカ経験アリのキャラや、援交していた過去持ち、無自覚に浮気する後輩など、時代を先取りした属性のバーゲンセール状態な内容。と言っても、シナリオ的には彼女たちを救済する話なので、プレイしてみるとそこまで鬱々とした内容でもなかったりします。

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 前にブログでリストカットするヒロインはこの作品で始めて見た」と語った記憶がありますが、今思い返すとkanonの栞もリスカ経験ありましたね。ゲームでは直接的な描写はありませんでしたが、アニメでは暗い自室でカッターを見つめるシーンが挿入されました。

 今日は折角誕生日ということで、その中でも希死念慮持ちの今で言う構って女である、「須磨寺雪緒」さんルートの話をしましょう。

 

 ※もう十数年前のゲームですので、ネタバレを気にせず書いていきます。未プレイの方はヤバそうなあたりまできたら、自己判断で引き返して下さい。

 

須磨寺雪緒 

・屋上の須磨寺さん

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 須磨寺さんとの出会いは、放課後の夕暮れ時に差し掛かる屋上から始まります。

 主人公はいつも授業をサボっては屋上に侵入してタバコを嗜んでおり、その日も一服吸いに来た際に、偶然飛び降り自殺を企てる美少女と出会ってしまいます。屋上に侵入しタバコを吸うマイルドヤンキーらしさに、松本大洋先生の「青い春」を思い出しますね。因みに僕は沖縄のヤンキーだらけな中学出身なので、皆屋上どころか教室のベランダで吸っていました。情緒とか全く無い。

 今にも飛び降りそうな彼女を見て動揺する主人公に、須磨寺さんは「こんにちは」と冷静に挨拶をします。ここでクール系主人公なら「おいおいキミの国では夕暮れ時にもこんにちはなのかい?」なんて気の利いた返しをする所ですが、彼は斜に構えたマイルドヤンキーな割に、異様にパニックに弱いので、ひたすら怯えるだけです。

 

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 主人公が自分の異常な行動にビビってると察した須磨寺さんは、すかさずポエムコンボで追い打ちを仕掛けます。最後に問いかけまで決めて完全に気持よくなっている状態。構ってちゃんは、自分の突飛な行動で相手が困惑するとどんどんつけあがります。

 それにしても主人公の返事も「!」のみで、喋れないメガテンドラクエ系の主人公じゃないんだからと言うか、最早マガジンのヤンキー漫画のキャラみたいですね。

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 なんだかんだで結局飛び降りない須磨寺さん。こういう女インターネットに腐るほど存在しますね。このファッションメンヘラさが彼女の魅力です。序盤の彼女は「わたしは本物じゃないかもしれない」「わたしには感情なんてないから」と、セリフだけ切り取ると非常にうざったいです。

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 誤解無きよう補足しておきますが、僕はそんな須磨寺さんが大好きです。初登場から数クリックで、ここまでキャラ立てしたヒロインも珍しいですし、何よりまだメンヘラという概念が一般的でない分、そう言った描写へのわざとらしさが薄く、全体で見るとそこまで痛々しくないのが良い塩梅。

 

・リアルな妹

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 このゲームには攻略できない妹ヒロインである「恵美梨ちゃん」が居ます。一見「柚原このみ」のような外見で可愛らしいのですが、変にリアルに妹らしいところがあり、やたら兄に突っかかり、割りと本気で嫌っています。エロゲのように無条件でセックスさせてくれる甘々な妹なんて存在しないんですね。エロゲですが。

 色々あって主人公は子犬を家で飼うことになったのですが、それを見た恵美梨ちゃんが、斜に構えた兄らしくない行動に「食べる気なんだぁっ!」と軽い気持ちで皮肉るのですが……

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それを受けて突然主人公が「血を流して楽しみたいのかっ!」とキレ始めます。

 兄妹仲が悪い云々の前に、この変貌っぷりは精神病棟で隔離したほうがいいレベル。これにはいつも兄を小馬鹿にしている恵美梨ちゃんも泣き出してしまいますが、実の兄に突然「お前の方が、一度バラされて死ねっ!」とまで言われたら当然の反応です。

 

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 そんな恵美梨ちゃん、実は須磨寺さんと知り合いだったりしまして、その上教室で一人ギターを弾いている須磨寺さんに恋しちゃったりしています。須磨寺さんルート以外では特に妹に同性愛者描写なんてないので、突然レズである事が発覚しユーザーも困惑。

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 こういう場合、セオリーとして鈍感設定にしておくべきだと思われますが、何故かちょっとベタベタしているだけで、恵美梨の禁断の恋心を察する主人公。それらしい描写も薄く、決め付けに近いので、ただの百合厨である可能性もあります。この危うい関係は後に危険を孕んでシナリオに絡んできます。

 

・セフレになっていく須磨寺さん

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 偶然須磨寺さんと同じお店でバイトをすることになった主人公、バイト上がりに一緒に帰宅するのですが、二人きりになるやいなや、須磨寺さんはすかさずポエミーになります。ちゃんと一つ一つのオリジナルポエムに大袈裟に反応する主人公が、面白くて仕方ないのでしょう。こういった発言は、リアルの知り合いよりスカイプちゃんねるで見知らぬ出会い厨のおっさんあたりに言った方が、痛手を受けずに済みます。

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 自分に自殺願望がある事を言いふらされないよう、身体で口止めを申し出る須磨寺さん。余りにも地雷女すぎる提案に、ユーザーも椅子からひっくり返りそうになるでしょう。しかし、これを受けての主人公の反応もおかしく、

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「怖くて逃げる」なんて選択肢が出てきたりします。もう片方は性欲に委ねすぎですし、「丁寧に断って帰宅する」という現実的な考え方が一切ない。ある意味思春期としてはリアルなのですが。これは後者のほうが正解で、「(自殺願望のある)死体とセックスしたいなんて、オレはネクロフィリアか?」と訳わからんツッコミを入れつつも、ホテルへGO。

 因みに「怖くて逃げる」を選択すると、「うわぁぁぁぁっ!」と奇声をあげわけもわからず逃げ出しゲームオーバーになります。流石にそのオーバーな反応は、自称感情がない須磨寺さんもビックリしたことでしょう。

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 晴れてシナリオゲーには珍しい「セフレ」関係になる二人。この後も須磨寺さんは事あるごとにセックスを迫ってくるので、性欲が強い依存型地雷女っぷりを見せてくれます。段々と理由をつけてセックス中毒になっていく描写が、丁寧でいい……。しかし、純愛系の絵柄でさらっと「ええ、気持よかった」と言い放つのはえっちですね。

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 身体だけの関係を重ね、確実に距離が近くなっていく二人。私が希死念慮のあるメンヘラ女だと言ってもいいよと申し出たりもしますが、恐らく主人公がそんな事するわけ無いと分かってのテストでしょう。依存性の強い女性は、こうしてパートナーを試すような行動を無意識に行います。このシーン何度プレイしても、最後に「ジ・エンド」と、キカイダーのキメ台詞みたいな表現を使用するので笑ってしまいます。

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 引き止めると分かって、柵を越えていく須磨寺さん。女性らしい感情マシマシ。

 

須磨寺さんと恵美梨

 こうして須磨寺さんの狂言に毎回振り回される主人公。こうやって毎回構ってしまうのが、相手に更に突飛な行動をさせる原因になるんですよね。

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 ある日、妹である恵美梨が想いを抑えきれず、こっそり須磨寺さんの唇を奪うシーンを目撃。この1枚はとても美しいCGです。

 それを受け須磨寺さんに感化されたのか「幻想的な世界にあってか~」と、百合ポエムを展開する主人公。やはり彼は百合厨である可能性が高いです。

 

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 しかし、須磨寺さんは恵美梨の感情を否定します。目に涙を浮かべて逃げ出す恵美梨。ここだけ抜き出せば百合ゲーのワンシーンなのですが、須磨寺さんは残った主人公にすかさずセックスを申し出ます。この淫乱メンヘラ女はもう~。

 

感情の復活

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 そんなこんながあって、流石にお人好しの主人公も、須磨寺さんに感情が全然ある事に気づき始めます。

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 それ受けた須磨寺さん。感情を失った理由は、過去に飼っていた弟同然の犬が亡くなったからと辛い過去を吐露。

 因みにその過去に飼っていたデカイ犬は、彼女と違って本当に感情がなさそうな表情をしています。

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  もう大切なモノを失ってしまう事が怖く、それで自分を好きだと迫った恵美梨ちゃんを、思わず拒絶してしまったと話していく須磨寺さん。

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 感情が戻った自分に生きる価値が無いと、メンヘラの拗らせっぷりもパワーアップ。自分が美少女な事をいいことに、どんどん都合のいい事を言い出し続けます。

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  しかし、主人公も須磨寺さんが死ぬなら自分も生きる価値ないと言い出し、共依存もここまできたか……と言うか、メンヘラ女に媚びる出会い厨の最終形っぽい事を提案します。この彼女にしてこの主人公あり。

 

天使のいない12月

  そして自殺決行日。いつもの放課後の屋上。二最後だけ「恋人のように」と激しいセックスをする二人。決して「恋人」という関係には満たされていない二人。これがまた、死ぬ前に生存本能が働いているのか、今まで淡白な描写だったHシーンに気合が入ってまして、とてもえっちなんですよね。

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 離れないようリボンで手を繋いで一緒に飛び降りる二人。いい……。

 このシーンだけでも数千円払ってプレイする価値がある程美しい。何度もプレイしメンヘラ女という概念が陳腐になった今でこそ、須磨寺さんの発言にツッコミを入れながら解説できますが、初プレイの衝撃は大きかった。何よりちゃんと飛び降りるのが良い。今迄プレイしてきたエロゲの中で見惚れたCGトップ10に入ります。

 それにしても、凄いゲームです。あれだけありがちな純愛ゲーの基礎を築いてきたLeaが、ここまで思春期の女性の感情を美しく描いた作品をお出ししてきたのですから、これからも語り継がれていくべき名作でしょう。

 何より、他ヒロインも合わせて、全員本来ヒロインには付けていけない属性(自殺癖、浮気癖、援交経験)などに挑戦し、一本の作品にまとめたのが素晴らしい。

 最初は須磨寺さんをミステリアスな美少女だと思っていたのですが、大人になった今では、彼女がどれだけ芯が弱く安っぽい行動や陳腐なポエムで、主人公の気を惹こうとしている視点で見ることができ、そのリアリティがまた愛おしくして仕方ありません。結局引っ込みがつかなくなって、途中は身体だけの関係に身を委ねただけですから。

 そんなこんなで須磨寺さんは、今でも文句無しに大好きなヒロインです。遅れましたが誕生日おめでとう。

 

 僕のフォロワーにも富士山から飛び降りた方が居ましたが(運良く助かり、今は僕の地元沖縄で愉しそうにソシャゲの実況をしています)、彼にも最後の景色はこれくらい美しく見えたのでしょうか。

 という訳で、Leaf一のビッチだと名高い須磨寺さんが、10年以上経った今でも大好きなんだよというお話でした。

 

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