「桜Trick」と「シムーン」の女の子同士のキスシーン回数を比較する
桜Trick
皆さんは「最も女の子同士のキスシーンが多いアニメは何か」を訊かれて、どの作品を想像するでしょうか? 2014年以前なら「神無月の巫女」「Strawberry Panic」「シムーン」など、様々な作品が挙げられた事でしょう。しかし、2014年に放送された「桜Trick」は、これまでのどの百合アニメよりも多くのキスシーンを見せつけ話題になりました。
各話とも必ずキスシーンが描かれているのが同作品の特徴。作者が描いた女の子同士がキスをする同人作品を見たきららの編集者から声をかけられ、それがきっかけでそういう要素のある作品を、と言われて描いたのがこの作品とのこと。ただし「毎話キスを」とまでは言われていなかった
とのこと。出だしの「各話とも必ずキスシーンが描かれているのが同作品の特徴」から、一文でこの作品がどのような層をターゲットにしているか伝えきっていて凄いです。きらら編集から拾われたエピソードも凄みを感じさせます。
因みに本作は「きららミラク」初のアニメ化作品。女の子同士が毎回キスするという、女の子同士の友情が主な日常系から一歩踏み込んだ大胆な世界観で、本誌を長年支えてきた実績と貫禄ある作品でもあります。
今回は、そんな桜Trick全12話のキスシーンの回数を記録し、その数字がどれだけ大きいのか確認していく記事です。
余談ですが、桜Trick公式アカウントには、他作品の公式アカウントにはない独特な雰囲気があり、何もイベントがない時期は「桜Trick」とだけ意味もなくツイートしたり、
— TVアニメ「桜Trick」公式 (@sakuratrick_pr) 2016年9月21日
更に何もない時期は、「桜Trickはその先」「桜Trickは証」など、言葉の意味はわからないがすごい自信を感じさせるツイートをします。
桜Trickはその先
— TVアニメ「桜Trick」公式 (@sakuratrick_pr) 2016年4月25日
僕はそんな桜Trickが大好きです。
シムーン
ただ桜Trickのキスシーン数を計測していくだけではつまらないので、今回の記事では比較対象として、桜Trick以前での女の子同士で行うキスシーンの代名詞だった「シムーン」の回数と較べていきます。恐らく、2番目に同性でのキスシーンが多い作品であると思われます。
大空陸(だいくうりく)という全ての人が女性として生まれてくる星を舞台に、巫女として神に祈りを奉げる少女たちが否応無しに戦争に巻き込まれていく姿を描いている。女性同士の恋愛を描いたシーンもあることから「百合」アニメとみなされることもあるが、監督である西村純二は「思春期の少女の話」であると述べている。
シムーンもまた女性同士のキスシーンが多い事で有名な作品です。シムーンには独特の世界観と設定があり、単純にキスと言ってもカップル同士で行う愛情確認のみが目的ではありません。
このブログで説明するには、余りに専門用語や設定が複雑すぎるので省きますが、シムーン世界では「シムーン」と呼ばれる機械に搭乗する際、二人組で儀式的なキスを行います。
それ故に、時には想い合っている相手以外や、険悪な状態でのキスなども頻繁に発生し、そこから更に複雑になっていく人間関係も、シムーンの魅力の一つです。こういった設定のため、シムーンでは複雑な感情を伴ったキスシーンが数多く行われます。
突然ですが、岡崎純子先生によるノベライズ版は非常にお勧め。
シムーンのノベライズ版は、地の文による巫女たちの心理描写がより繊細で美しく、キスを繰り返すたびに変化していく感情の表現が凄く良いです
— にゃるら (@nyalra) 2016年10月17日
一ページ目から畳かけるように始まる、少女たちの口づけシーンと百合ポエムは圧巻の一言。
キスシーン回数の比較
・シムーン
シムーンのキス回数は、既に先人が計測済み(参考: シムーン 全キスシーン - 或はお望みのもの)なので、大変助かりました。総回数は全26話で「59回」。(異性間でのキスシーンをカウントしないならマイナス1です)キス回数が最も多かったのは二組同数ですが、主人公であるアーエルとネヴィリルが「9回」で1位でした。一話につき「約2.3回」口づけしている計算です。
補足としてこちらが調べた結果、初キスまでのタイムはほぼ5分丁度で、一話あたりのキス回数が最も多かったのが10話の「6回」でした。
10話と言えば人気キャラのマミーナとロードレアモンとの関係性が掘り下げられる回でもあります。この辺りの話ははばたくキツネさんの記事が素晴らしく解説してくれているので、視聴済みの方はご参照下さい。
・桜Trick
キスシーンを計測するにあたって、桜Trickの場合、一話での平均回数が非常に多く、一回のキスシーンも長く濃厚で、連続してキスシーンだけ見ていると気が狂う寸前まで追い込まること必至です。
さて気になる回数ですが、総キス回数は全12話中で「77回」。キス回数が最も多かったカップルは、主人公である春香と優で「70回」。殆ど主人公カップルのキスだけで占められて言うのが分かりますね。一話につき約「6.5回」キスしている計算です。平均回数だけでシムーンの最もキスシーンが多い回を凌駕しています。
因みに初キスまでのタイムは「13分7秒」と遅め(何を基準としてなのか全く分かりませんが)ですが、初めてのキスで「35秒間」唇を重ねっ放しなのは、初っ端から視聴者を試すことのできる強さの証でしょう。
最もキス回数が多かった回は6話で「14回」。学校行事でのライブ中に曲が終わるまでひたすらキスし続けるという、非常に迷惑なバカップルぶりを見せつけます。
当然ながら全て同性ですが、桜Trickの世界は女子校でなく男女共学でこの状況なのが、最早ホラーの域です。ここまで美少女揃いな中、一切ヘテロカップルが生まれない辺り、この学校の男子生徒は全て百合厨である可能性が高いです。
こういったタチ先生独特の、自然と女性だけで恋愛が起こる世界観は、他作品にも引き継がれ「双角カンケイ」でも思う存分百合百合しています。桜Trickだけでは物足りなくなったファンは是非購入してみて下さい。
双角カンケイ。 (1) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)
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・比較して
という訳で、シムーンが2クール使っての56回キスという記録を、1クールで77回という驚きの回数で桜Trickの圧勝となりました。両作品ともキスシーンを内容に組み込んでくるのが巧く、こういった機会にキスを中心に見ていくと、口づけ一つに何重もの意味を置いているのが分かります。特に桜Trickの二人は、段々と大人のキスになっていく過程が凄い。
無論キスシーンが多いからといって、百合アニメとして優れているわけではありませんが、この記録が今後の作品へ何らかの影響を及ぼしたり、一つに指標になるのかもと想像するとワクワクしますね。
印象に残ったキスシーン
折角なのでオマケとして両作品の印象に残ったキスシーンを。ネタバレ注意です。
矢張りシムーンで一番印象強いのは、ラストの投獄された壁越しにキスするアーエルたちでしょう。
シムーンを動かすためでなく「好き」という感情を伝えるためのキス、物理的な壁に阻まれても通じ合う二人の心。主題歌である「美しければそれでいい」のフレーズを象徴するかのような美しさです。
他にもマミーナとロードレアモンの複雑な心情と関係性なども、キスという観点から語っていきたいところですが、主題からどんどんズレていくので割愛。少しでも気になったら、確実に満足し強烈な余韻を遺すアニメですのでDVDで御覧ください。
EMOTION the Best Simoun(シムーン) DVD-BOX
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この記事執筆中に、なんとも言えない気持ちになる投稿を見つけたので更にオマケ。
何かの間違いでシムーンに興味を持ってしまった小学生みたいな人見つけた pic.twitter.com/awVlQaSaPQ
— にゃるら (@nyalra) 2016年12月14日
参考:シムーン?とゆうアニメは、なぜ女性同士でちゅーしまくってたのですか?一回だ... - Yahoo!知恵袋
毎話キスシーンを挿入するという誓約がある桜Trickでは、勿論毎回のキスが見どころではありますが、
その中でも、体育倉庫の窓から身を乗り出してキスは、アクロバティックを通り越してそういう妖怪みたいで絵面が強烈。更にこれ外側に友人が居るので隠れてキスしている状況なのも評価ポイント。授業中くらい我慢して欲しいですが。
面倒なので纏めますが、水中でのキスや、寝ている間に後頭部や膝などへのキス、勉強中に単語一つ覚える度にキス、電話越しでのキスなど、多種多様のシチュエーションが見られるのも、桜Trickの魅力。電話越しでの口づけを表現するための「チッ」というSEの舌打ちっぽさは、是非一度聴いてみて欲しいところ。
オマケのオマケになりますが、桜Trick原作では、紹介した以上にキスシーンの多様性への挑戦が見られ、最近ではできたてカップルによる短冊越しのキスや、
間接キスからキスシーンを連想するなど、様々な変化球を投入し読者を飽きさせない工夫が見られます。更に最新話では、きらら作品では珍しく、一話丸々シリアスに使ったりと、意欲的な姿勢が見られます。進路の話も始まり、終わりを予感させる話も増え始めましたが、これからもタチ先生と桜Trickを応援していきたいですね。