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「賢者の孫」6話EDが唐突にバーチャルYoutuberのMVになるまでの過程の話



賢者の孫

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 賢者の孫は、現在放送中の「小説家になろう」原作アニメです。画面下にテロップがあるので一見違法アップロード感あるキャプに見えますが、このアニメは子供向けアニメよろしくご丁寧にOP・EDで歌詞テロップが表示されます。

 このようなツッコミどころでの引っかかりを作る演出は、本作の監督でありOP絵コンテを務めた田村正文氏の手腕。絶妙に腹ただしいサビでの主人公のテヘペロカットといい、視聴者がどういった目線で本作のアニメを楽しみにしているかを完全に理解してますね。

 そんな賢者の孫の6話EDが「編集ミスで別作品の映像が流れたんじゃないか」と視聴者が不安になるほど、唐突に作品と全く関係のない映像に差し替わる事態が発生。

 初見の方には信じがたいと思われますが、この子は本編に出てくるキャラクターではありません。もちろん、賢者の孫は一般的な視聴者が想像する異世界転生系作品ですのでバーチャル要素も一切ない。そもそも異世界転生アニメとバーチャルYoutuberをどう組みあせて両両相俟う結果にするつもりだったのか不明で、このEDがもたらしたものはコラボによる盛り上がりでなく混乱でした。

 

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 せめてMVとしてのクオリティが高かったり、背景が本編とマッチしているなら腑に落ちるのですが、おだしされたのはゾンビのように左右に揺れたあとに繰り出される意図不明の決めポーズ。

 

 公式サイトのコメントによりますと、

ED主題歌「圧倒的 Vivid Days」のMVが第6話のエンディングで初解禁することが決定!! |ED主題歌「圧倒的 Vivid Days」のMVが第6話のエンディングで初解禁することが決定!!

<吉七味。コメント>
世界観にぴったりの壮大なスケールに仕上がりました!
珍しくキレッキレな七味のダンスをお楽しみ下さい。
後半になるにつれカッコ良さが増していきますので、是非お楽しみに!!
圧倒的映像をお届けします。

 後半になるにつれカッコ良さが増すとのことですので、ゾンビダンスはカッコ良さを追求した結果であることがわかります。振り付けを本人が考案したのかまでは定かで無いがこのずれっぷりはかわいい。

 声優としてはまだまだ未熟であるものの少なくとも歌唱力は本物ですので、このままバーチャルタレントとして良い楽曲を作り続けて欲しいですね。モデルのクオリティはもう少し上げた方が良いと思いますが。

 

 下記の記事内にある原作者コメントでは

史上初“女性バーチャルタレント限定”オーディション最終予選開始!優勝者は『賢者の孫』EDアーティストデビュー!予選通過者17名&原作者・吉岡剛からのコメントも到着! | 超!アニメディア

 「本企画を通して初めてバーチャルタレントの存在を知った」とありますので、原作者の意向という訳でなく、本当に原作者の知らない女性が本編と無関係の場所でキレッキレのダンスを踊る映像が6話で唐突に流れたという結果に。

 あまりのゴリ押しっぷりに業界からの圧力や思惑が見え隠れする企画ですが、この令和アニメ初の奇跡的な齟齬は多くの視聴者の心を鷲掴みする結果となり、話題性としては大成功じゃないでしょうか。実際、自分はこういったカオスまで含めて楽しんでおります。

 今回は、そんな賢者の孫の話と6話EDが流れるまでの過程を追っていきましょう。 

 

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 補足となりますが、例えばED以外でも、この「間隔」という概念が抜け落ちたぎゅうぎゅう詰めのクラスメイトのカットなど、意図的なのか天然なのか判断つきにくいあたり憎めないアニメだなと感じますね。

 とりあえず6話EDの話に戻る前に、少しだけなろう作品について書いていきます。

世間知らず、王都に立つ

世間知らず、王都に立つ

 

 

なろうでの流行の移り変わり

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 2019年春アニメでは、賢者の孫の他にも異世界カルテット」「盾の勇者の成り上がりなどの、なろう原作アニメが放送中。人気作同士をクロスオーバーさせ学パロの形に落とし込んだ前者はもちろん、前クールから継続の後者もコミカライズ作品がコミックフラッパーの売上を何倍にも跳ね上げるほどの大人気。

 「賢者の孫」「盾の勇者」の作風の違いですが、賢者の孫をざっくりと解説するならなろう初期のテンプレートに沿った作品でして、異世界転生した主人公がその恩恵かつ恵まれた能力を使い、その圧倒的な存在感で周囲から持ち上げられ世界の危機を救う……と言った、わかりやすく読者にストレスをかけない配慮が行き届いた設定。

 いわゆる「なろう系」のイメージに近い作品と言えるでしょう。テンプレが確立された後のなろうでは異世界食堂などの食事系も流行。アニメ化の波に。

 ※指摘があったので補足ですが、例に挙げた各作品の開始時期となろうでのジャンルの流行は時系列に沿っているわけではありません。「賢者の孫」は特に初期のテンプレなろうの設定を比較的最近で取り込んだ作品かつ、盾の勇者の連載開始時期は2012年と古め。

 

 そして「盾の勇者」は、とにかく全員からチヤホヤされたい! という展開から一捻り入り、序盤で仲間外れにされたり裏切られ底辺扱い状態から上り詰めていく内容です。つまり、クラスの人気者たちと自分が仲間になり褒められている様は想像もできないし拒否感があるので、自分が見下されている状態でそんな彼らが驚き崇めるほどの存在に成り上がる主人公に感情移入する時代へ突入。ヒロインも学園で高嶺の花扱いの美少女から奴隷少女にシフト。どんどんオタクの欲望が歪んでいきます。

 この間にも、主人公がモンスターやモフモフした動物などに転生するモフモフ系やキュート系などの派生もありました。

 

  更に、冒険自体に食傷気味になった読者のために、昨今ではスローライフ系が人気に。まだアニメ化の波はここまで届いていないですが、時間の問題だと思われますので流行を先にチェックしていきたい場合は、このあたりを漁ってみると良いでしょう。

  ざっくりとしすぎて説明で、僕以上になろう系を追っている方からはツッコミどころもあるかも知れませんが、この歴史を踏まえた上で賢者の孫の話に戻します。

 

 ちなみに賢者の孫のコミカライズ版は、ヤングエースUP上で常に合法的に全話無料で読めるので、興味を持った際は一読ください。

 

なぜ6話EDができあがったのか

 賢者の孫自体が原作はなろうの流行基準だと古く、ジャンルが比較的新しい「盾の勇者」側にメディアミックスでの注目度が必然的に高い状態。そんな中、賢者の孫が話題性を集めるために使用した手段が、最近の流行であるバーチャルYoutuberでした。

 実は賢者の孫は、去年から「エンディングテーマアーティスト&声優デビューを懸けた”女性バーチャルタレント限定”のオーディション」を開催しており、そのオーディションを勝ち抜いたのが彼女「吉七味。」さんです。

幼い頃から歌とアニメが大好きで、でも自分に自信なんて全く無く、まさかこんな日が来るとは思いませんでした。この機会を与えて下さったファンの方達へ感謝を胸に、EDテーマを愛を込めて歌います。初めての歌と声優で力不足な点は多々あると思いますが、最高のスタート地点から七味は努力と共に駆け上がります!見守っていてね

 僕も、まさかバーチャルYoutuberがバーチャル要素一切ないアニメのEDを乗っ取る日がくるとは思いませんでした。自分に自信のなかった女の子がアイドルとして精一杯歌って踊るという展開は王道でとても良いと思います。

 

 つまりavex picturesとSHOWROOMの合同企画のオーディションが、なぜか「賢者の孫」のED曲と声優出演をかけて行われた結果であり、賢者の孫が話題性を優先するためバーチャルブームに乗っかったことも、順を追っていくと理屈として当を得ることは可能です。問題はミスマッチ感の解消に注力できなかったことと単純なクオリティでしょうか。

 と言っても、冒頭で話した通り、この混沌とした雰囲気や制作陣の一周してどう調理すれば原作ファンが喜ぶかの理解度は目を見張るものがありますし、大好きです。

 余談ですが、「賢者の孫」なろう原作の主な読者層は40代~。仕事帰りのサラリーマンが、電車に揺られながらスマホ片手に自分にもあったかも知れない別の人生を楽しんでいるわけですね。コミカライズだと読者層下がって20代あたりに。若者には文より絵のほうが馴染みます。

 アニメだと更に下がって広がっていくわけですから、春秋に富む若者の流行に合わせたバーチャルYoutuberの起用が必ずしも間違いではありません。

 今回は少々混沌としすぎて視聴者が混乱や怒りを覚えたりもしましたが、チャレンジブルな企画自体と吉七味。さんのタレント活動は今後も応援していきたいです。

 

蛇足

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 アニメでも完璧に再現された、本作の代名詞である「またオレ何かやっちゃいました?」要素ですが、同じくアニメ化を控えたなろう作品「私、能力は平均値でって言ったよね!」では、主人公が少女のためこんな感じに。

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 シチュエーション的に同様でも、主人公が女の子ならこんなにもただただ可愛い。

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 本作では、なろうのテンプレを女主人公が務めた上で、恋愛要素を排して、たまに力の加減を間違えてしまう主人公のコンプレックスを、とことん良い子なルームメイトの女の子たちが優しく受け入れていくという、なろう作品の中でも特段きらら作品のような空気感がある作品ですので、僕は大好きです。弱気だけど健気な女の子が、そのひたむきさのおかげで高飛車お嬢様に受け入れられていくのいいよね……。

 せっかくのなろう作品について語った記事ですので、好きな作品の宣伝でした。