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プリンセス・プリンシパル 6話「case18 Rouge Morgue」



プリンセス・プリンシパル

 「プリンセス・プリンシパル」は、スチームパンク×スパイ×美少女×百合というオタクの好きなモノを掛けあわせ続けたような作品でして、当然僕も今期では大分愉しみに視聴させてもらっています。前期の「クロックワーク・プラネット」からスチパンな世界観が連続して満足。

 黒星紅白先生の可愛らしいキャラデザも然ることながら、音楽の梶浦由記さんの力も大きく、ノワール」「MADLAXあたりのハードボイルドな美少女を演出する空気感が見事。この二作が好きで観てもまず外さないでしょう。放送前の印象はコヨーテ ラグタイムショーでした。

 拳銃描写や舞台設定など細かい部分が注目されている作品でもあるのですが、設定協力に速水螺旋人先生が関わっています。製作側の力の入れようが伝わりますね。

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6話「case18 Rouge Morgue」

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 プリンセス・プリンシパルは、各話ごとのサブタイトルの数字順で時系列を表していまして、今回の話は18回目の事件。全てのcaseがいくつまであるのか判明せず、途中で前後したりもしますが、6話は放送されている中では最も奥となる話です。

 絵コンテは「内藤明吾 」さんで、演出は「工藤寛顕」さん。両者ともにアクタスで活躍しているスタッフですね。脚本は一貫してお馴染み「大河内一楼」さんです。

 今作の見どころは、一話完結の中で二転三転するストーリー構成と逸材でハードなオチですが、6話はこれまでのハードさに輪をかけて救いようがなく、人情話や感動を誘う伏線なども見事でして、喩えるなら百合スチームパンク鬼平といったところでしょうか。

 電撃オンラインでのインタビューでは、監督も「歌が流れる回」を特に気に入っていたようなので、恐らく6話の事だと思われます。スタッフからもオススメ回。

 

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 今回の大まかな話の流れとして、ドロシーとベアトが通行者の半分が帰ってこれないと言われる幽霊通りの先にある死体処理場へ潜入するお話。対魔忍なら潜入先で風俗嬢になる展開です。

 18度も命がけのミッションを経験しておいて、未だに猫一匹に怯えるベアトちゃんがかわいい。重苦しく薄暗い今回の清涼剤ですね。

 

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 冒頭から何度かドロシーの面倒見の良い部分が描かれるのですが、これも人格的にはともかくスパイとしては致命的な甘さに繋がります。まだ覚悟の足りないベアトとの相性が良いのも、二人がアンジェのように徹しきれていないからでしょう。

 ベアトに構ってやりながら無意識に歌を口ずさむドロシーが可愛らしい。

 

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 小汚い死体処理場では、治安の悪い街並みの中でも一際暴れん坊なおっさんが登場。竿役ですね。さっそく綺麗なドロシーに目をつけて接近したと思いきや親子である事が発覚。娘の帰りを素直に喜ぶダメ親父。

 父親から「デイジー」と呼ばれることで、ドロシーの実名が発覚。実はドロシーは母親の名前でして、それをコードネームと使用する家族を捨てきれないところも、ドロシーのスパイとして甘さが読み取れます。

 この死体処理場に凄惨な死体が溢れかえる現状にベアトも動揺していますが、原型になっている当時のロンドンでも実際に排煙で沢山の死人がでてまして、それに加えて複雑な勢力図故に争いの耐えない世界観が表現されているのでしょう。

 

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 新たに出てきたのはダメ親父から借金を取り立てるオカマ口調キャラ。竿役2。このキャラの演技が故・広川太一郎さんをリスペクトしていまして、演じているのは広川太一郎さんのモノマネが特技である「もりいくすお」さん。エンド・クレジットで確認するまで、まるでご本人が乗り移ったと勘違いする程の名演でした。

 竿役らしく「払えないなら娘を貰ってもいいんだぞ」とドロシーを値踏み。腕の怪我を言い訳にいつまでもお金を返さず掃き溜めでくすぶる親父にドロシーは激怒し、「怪我したって頑張っている人は沢山いるよ! 怪我のせいにして逃げているだけじゃない!」とスパイ業にあるまじき正論をぶつけ、彼女の感情が演技でないことがわかります。

 

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 実の娘に説教され暴れて物にあたる親父に「恥ずかしくないんですか! ちゃんとお父さんやってくださいよ!」とベアトが怒るも、力で負けてしまいます。レイプシーンですね。このあたりも主人公・アンジェやプリンセスなら冷静に対処できたのでしょうか。

 

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 ダメ親父はベアトの首が改造されている事に気づき、首のダイヤルを弄り回ります。アニメ史上でも例をみない声帯をレイプするシーンです。彼女は首を父親に強制的に改造されて以来、ダイヤルを弄る事で好きな声を出せるようになるのですが、実父には首を改造され、ちせの父親には首を斬られそうになり、ドロシーのダメ親父からは首を弄り回されたりと、各メインキャラの父親から異様に首を狙われています。

 見かねたドロシーに救出されるベアト。実の娘から軽蔑の眼差しを向けられ、激昂すると思いきや「悪かった! オレを置いてかないでくれ!」と泣き崩れます。暴力的ながら家族には弱く根は気弱。かと言って善人でもないあたりが救いようのない。

 

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 二人で夜のドライブを楽しみながら、自分の過去話をベアトへ聞かせるドロシー。父親から暴力を受け続けるも、最後は決まって「すまねぇ。デイジーすまねぇ」と泣いて謝るダメ親父に、家出はしつつもどこか恨みきれてない部分が読み取れます。奴隷商人痴皇の仕打ちを素でやっている状態。DVによる共依存はこういった過程から発生します。

 

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 例え相手がチームであれ自分の過去話なんて聞かせるのはご法度。

 

 「どうして話してくれるんですか? スパイって素性を明かさないものだと……」

 「アンジェはそうだな。わたしは多分アンジェより弱いんだ。それとベアトはわかってくれるかもって思ったんだ。ごめんな」

 「ドロシーさんがそう言ってくれるって事は、わたしたちもうカバー(偽の肩書)じゃなくて本当のお友達ですね」

 

 満点! 満点! 満点! 百万点です! アンジェにない隙を持っているからこそ惹かれ合うふたり。スパイの過去というふたりだけの秘密の共有。ベアトの甘さからくる「本当のお友達」という表現。語り手であるドロシーの自嘲気味な横顔もさることながら、夜風を受けるベアトの顔の良さが光る。

 この後ちゃっかりふたりでイチャつくアンジェとプリンセスのパートが入るのもポイント。冷徹なポーカーフェイスのアンジェも二人きりの時は破顔しています。

 

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 ダメ親父の部屋へ潜入する二人。冒頭でドロシーが口ずさんでいた歌を、親父も寝言で歌っています。所々に部屋から家族の想い出が残っているのがポイント。

 放って部屋を散策していると親父がベッドから転落し起きてきますが、ここでドロシーを母親の方であるドロシーと見間違え、「デイジーだよ」と少し嬉しそうに返す彼女の声色が切ない。

 娘にとっておきの儲け話を教える親父。運ばれてくる死体にマークのある奴が来るので、そいつの歯に隠されるメモを手に入れれば大金が手に入るとのこと。どうやら親父はあの死体処理場でその機会を狙い続けていた様子。協力してもらうとは言え、大事な儲け話を娘に話す分、親父がなんだかんだ娘を信頼している事が伝わる。

 依頼側の会話が挿入され「金のために動く人間が一番わかりやすい」とのこと。

 

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 早速マーク付きの死体から暗号表を見つけるドロシー。感極まって「流石オレの娘だ!」抱きつく親父に「調子いいんだから……」と呆れつつも、心から安心しているドロシーの演技が沁みます。

 上機嫌のままに死体処理場から飛び出し、「今夜はお前も飲むぞ、祝杯だ! 幽霊通りのパブで待ってろ、友達もな!」とだけ遺す親父。

 

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 しかし、幽霊通りのパブで待ち構えていたのは広川太一郎声の借金取り。ダメ親父が二人も肩代わりを差し出した事に喜ぶも、怒ったドロシーとベアトの二人から返り討ちに。

 借金取りを倒すと、親父抜きできたから勝手に肩代わりとして来たと勘違いしたとのこと。更には親父をどれだけ暴行しようともバカの一つ覚えのように「娘にだけは手を出さないでくれ!」と懇願してきたという話まで。

 

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 さて、親父の方は依頼側に「手に入れたのは娘だから二人分の報酬をくれ」と交渉していました。

 「アイツ綺麗だからよ、服でも買ってやってさ。一緒に街を歩くんだ。どうだ、オレの娘は美人だろ? って言ってよ」

 親父が金を要求したのは娘とやり直すため。「金のために動く人間が一番わかりやすい」、しかし親父は金以上に愛を望んでいて予想外の行動に出てしまいました。良い話ですが、当然依頼側としては要求は呑めずに親父を殺害します。元から口封じのために殺していた可能性が高いですが。

 小汚い死体処理場とゴミまみれの部屋で暮らしていた親父が、ステンドグラス越しに光り差す教会で夢を語って一生を終える。なんともこのアニメらしい最後を飾ります。

 

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 親父の末路なぞつゆ知らず、待ち合わせ場所のパブでお酒を飲むドロシー。

 「お父さんが来たら、わたしはすぐに消えますから」

 「来るかねぇ。約束守るような男じゃないし」

 まるで恋人へ悪態をつく振りをして惚気けるようなドロシー。頬が朱に染まっているのは、既に酔っているからか、はたまた愛故か。

 

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 親父がダメ人間でなければ家出なんてしなかったと語るドロシーに対し、 

 「じゃあスパイにもならなかった?」

 「今頃、パン屋の看板娘にもなってたかも」

 「じゃあわたしがドロシーさんと会えたのは、お父さんのお陰ですね」

 一言目「スパイにもならなかった?」のベアトらしくない砕けた言い回しで、ふたりの距離感の変化が示される。

 ドロシーの掘り下げがメインの回ですが、今まで特別多くの絡みや共通点がなかった二人に、今回の事件で新たな関係性が生まれた事も大きな見どころ。

 

 まだ父親の腕が現役で優しかった頃、寝る前に二人で歌った歌を懐かしむドロシー。すかさず首のダイヤルを回し父親の声で歌い出すベアト。思わぬ一芸に気分を良くした酒場の客達も合唱。任務中とは思えぬ幸せな時間が流れ、消え入りそうな声で「遅いな、父さん……」と彼の帰りを期待する本音を漏らす。

 

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 今回は特殊EDとなっていまして、ベアトと酒場の客達の歌がED曲代わり。歌詞が「今はこんなに遠く離れても 世界で一番君が大事だって」と歌われるあたりで場面が切り替わり、死体処理場に親父の死体が運ばれ6話は幕を閉じます。

 

 その後のCMもドロシー仕様という徹底ぶり。前回に引き続き、カスタムCMが流れる条件は父親の死という形になりました。

 一話でヒロインたちが容赦なく他人を殺していく様から、「このアニメはヒロインたちがスパイらしからぬ弱い部分を見せない強い作風なんだな」と認識させた事を逆手に取って、ドロシーの弱さに焦点を当てた名回でした。

 ラストの歌で盛り上がるドロシーたちと、静かに処理されていく父親の死体の対比。善人ではないものの憎むこともできない登場人物。借金取りに誤解を説かせたあたりも、変に悪趣味なまま終わらない余韻を残します。

  いつかドロシーが父親の仇を取る展開がくるのでしょうか。このアニメだと単純な復讐劇にならなそうで、期待と心配が入り混じりますね。プリンセス・プリンシパル 6話「case18 Rouge Morgue」……100点!!!!!!!!!!!

第1話 case13 Wired Liar

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