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イキりオタクとオタクの壁



■イキりオタク

 言葉自体は数年前から一部に使われていたのですが、昨今では「イキりオタク」なるネットミームが流行し始めました。「黒歴史」や「中二病」と呼ばれていた発言を一括したような単語です。

 言葉の意味としては、まんま「イキっている=調子にのっている」で「調子に乗ったオタク」な訳ですが、例としては「オタクだから全然モテない……彼女は居たことあるけど」など、さらっと自分が他オタクとは経験が違う事をアピールするモノや、アニメにハマって不必要に非オタクを見下し始めたりなど、自虐風自慢黒歴史の概念をより纏めたミームだという印象です。

 インターネットで見かける何となく腹立つオタクに名前を与えて叩く文化が生まれたのは、ネットの歴史にまた一ページな気がしますが、いかんせんこのイキりオタクを晒して騒ぐオタクも痛々しく、地獄がまた別の地獄を呼んでいる印象もあります。

 

 自分としてはこのイキると言いますか、他者と自分は違うという万能感や、独特のオタク文化に触れ始めた事での非オタクへ生まれた優越感などは、10代の特権だなと思いますしあまり不快さはありません。思えば古のコピペにはパソコンの授業中に他人に2ちゃんねるを勧めてアングラの世界に誘い込んでほくそ笑むオタクなど、イキりオタク文化のプロトタイプのようなネタも多いです。

 

 それはそれとして、個人的には興味深いネットミームでしたので、SNSなどで見かけるようになった主なイキりオタクを分類化してみました。

 

■イキりオタクの種類

 ・投影型

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  数日前に流行した「#あなたっぽいアニメキャラ」なるハッシュタグから発掘された例が多く、所謂ラノベの主人公と自分を重ねてしまうオタクたちです。

 この「#あなたっぽいアニメキャラ」タグから、優しさや強さを理由に「キリト」や「スバル」などの主人公格を自分に似ていると主張する中高生たちが晒しあげられたのですが、多くのツイートはイキりオタク構文を真似した釣りが多かったように見受けられます。丁度ミームが人口に膾炙し始めてみんなが模倣してくる時期でしたし。

 かと言って、タグの中身を自分から漁ってみますと、僅かながら数名は「本物」が混じっていまして、僕が中高生の頃にも、自身の髪型を何故かデュラララ!!のキャラに喩える(ごく普通のカット)オタクや、ただ物静かなだけなのに自分がキョンポジションだと語り始めるオタクが居た事実を想い出して懐かしくなれます。ネット越しに見る分には嫌いになれません。

  男に生まれたからには誰もが地上最強を夢見ることは、グラップラー刃牙でも散々証明済みですし、現代の中高生が最強のキャラに自己投影するのも自然な流れではないでしょうか。そもそも過去のオタクたちが相沢祐一に自分を重ねて散々暴れまわった形跡はネットの各地にありますので、選べれるキャラの世代が変わっただけだと思われます。

 

 ・オタク自慢型

 これもつい最近わかりやすい例が挙がり「アニオタを名乗るなら最低限この10本は見ろ!」という文とともに、アニメのタイトルを列挙するオタクが登場しました。

 その10本のラインナップがまた渋くて、ラブライブ!ごちうさ」「けものフレンズ」「SAO」など、中高生ウケのいいテンプレが揃っていまして、アニオタを声高に代表する割に、ほぼ10年代の作品しか挙げない度胸がカッコいいです。このラインナップで何故か「まどか☆マギカ」は入れない法則の読め無さも、本物らしくて好感が持てます。

 先述しましたが、深夜アニメに触れて一歩上に立ったような感覚を覚えた事が、透けて見えるのが良いですね。匿名掲示板やアダルトゲームを知りたてのオタクもこうなる率が高いです。残念ながらゲーム以上に簡単なエロが溢れた昨今では、わざわざアダルトゲームに近づこうとする少年はぐんと減ったように感じます。

 僕が中学生の頃には「ジョジョの奇妙な冒険」を読み出した所為で、「ワンピース」読者に「お前らの好きな作品よりもっと深いマンガあるんだぜ」と絡み始めるオタクが発生しました。彼がまだその浅さ故にネットに接続されていなくて本当に良かったと思います。

 纏めると大体は自分がオタクという一般とは違う存在になれた事を必死にアピールする人間たちでしょう。哀しきかな深夜アニメやアニメショップも増え始めた昨今では、そのオタクですら珍しい存在ではありません。人間が何者かになるのはとても難しいことですね。

 たまに彼らにマジギレする古参オタクが現れ、大変なことになる事態に発展したりもします。

 何も考えず貼り付けただけの画像ですが、よく見たら「イキ肉アクメシリンダー」「イキりオタク」が掛かっていて、お後がよろしいですね。

 

・能力誇示型

 これは「オタク」の中でより上の存在に自分を見せたい人間が、さじ加減を失敗してしまった例が多い印象です。

 「俺はオタクだけど彼女がいた」「お前らと違って学歴が高い」などの自慢を、あの手この手で文章に組み込んだ上で、自身もオタクの仲間であるという保険も掛けてくるタチの悪さが光ります。この自慢の仕方が遠回し過ぎて、本当に現実世界でもスペックの高い人間はしない言い回しが多いことも特徴です。

 

イキりオタクとオタクの壁

 この自身の能力自慢をそれとなくするオタクこそ、今では範囲が拡大してきた「イキりオタク」の原初であり、最も厄介だと疎まれているタイプではないでしょうか。

 それとなく異性との交流経験や容姿自慢などを行ったつもりでも、そのわざとらしさが文から匂って晒されてしまうパターンが多いですが、オタクから見ると現実の女性や自身の容姿への興味が薄いため、彼らのツイートに対し悔しさや嫉妬を感じ難く、それ故に両者の間に壁ができてしまいます。

 こういったオタク作品に触れつつも現実の充実を自慢する人間が多く見られ始めたのは、当然ネット人口が単純に増えた事もありますが、オタク文化が簡単に入りやすくなった事もあるでしょう。こんなブログでその問題に対しアレコレ言うつもりは毛頭ないですが、毎日インターネットを見ている身として、時代の変化の一つなんじゃないかと思ったりした訳でした。

 

おわりに

 ねとらぼでインターネットを守る翼竜というコラムを連載している割に、インターネットらしい事を一切書いていない事が気になって、こうして書いてみたのですが、こんな駄文をわざわざ大手のネットメディアに載せるのもアレかと思い、結局ブログを使いました。

 纏めるとオタクの誰もが形に残らなくとも「イキりオタク」的な部分があった時期はるでしょうし、それが思春期というものですので、頭ごなしに否定し続けるのもアレかなというか、晒して必死に叩こうと誘導する側も見ていて辛いので、個人的には嫌いではないです。

  さて、ここでオススメの一冊ですが、浅井ラボ先生の傑作短篇集「Strange Strange」に収録されている「ぶひぶひ❤だらだら」は、絶対に読んで欲しい一冊でして、簡単に内容を紹介するとクラス中から虐められているキモオタのデブが、妄想の中でヤンキーを退治したりクラスの美少女にモテたりするも、オタクに都合の良くない非情過ぎる現実が襲い続ける短編です。

 この一冊を勧めるために本記事を書いたと言っても過言ではないです。オタクはいつでも不器用なのです。

Strange Strange (HJ文庫)

Strange Strange (HJ文庫)

 

 

 

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