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愛すべき地雷エロゲーたちの想い出と、地雷エロゲーができるまで



THE地雷エロゲー

 先日、こちらの本を購入致しました。

(クリックで商品リンクへ飛びます)

 「THE地雷エロゲーです。今までも「美少女ゲームクロニクル」など、美少女ゲームに関わる本を多数出版していた、前田尋之さん監修なのですが、今回はいつも以上に直球かつ意欲的なタイトルです。

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 背表紙には、紹介されているタイトルの一部が載っています。

 エロゲーマー的には、「これは地雷じゃない!」と憤慨してしまいそうな作品も数作あると思いますので、まず本書で「地雷ゲー」と呼ぶ作品の定義を説明していきましょう。どうでもいいですが文中に「水月」と「水夏」を間違えている箇所があり、こういうちょっとした誤字が、いい感じに地雷ゲーっぽくて気に入っています。

 

 

地雷ゲーの定義

 地雷ゲーと言われると、最初に「あまりにも内容やバグが酷すぎて、まともに愉しんでプレイできないゲーム」を想像する方も多いのではないでしょうか。

 家庭用ゲームならば、その認識で十分だと思いますが、アダルトゲームの場合、「地雷ゲー」の定義は多岐にわたります。すなわち、内容やバグ以上にユーザーの心を折ってくる要素も多数ある事でもありますね。

 例として、本書で紹介されていない「地雷ゲー」扱いの作品にToHeart2 Another Days(通称AD)」を挙げたいです。

 

ToHeart2 Another Days

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 この作品は、皆さんご存知である大人気作「ToHeart2」のFDになのですが、一番の問題点として主人公の性格が本編以上にヘタレになっているのです。

 元から主人公である貴明くんは、初代主人公である浩之ちゃんと較べて大分女々しく、その分ふとした優しさでモテていくタイプでした。

 例えば浩之ちゃんはマルチと離れ離れになった際、学生をしながらあの手この手で貯金をため、一千万円でメイドロボットを買い戻す男らしさに溢れる青年でしたが、貴明くんはヒロインの一人と会えない状態になった際、廃人のように引きこもるバッドエンドがあったりします。どちらも極端。

 そんなヘタレ主人公代表な貴明くん、このADではヘタレさに磨きがかかり、お金にだらしなく、交換日記を他人に任せるような男になっています。それ以上に僕含めた当時のユーザーを驚かせた要素が、そんな貴明くんがえっちシーンに限って急にオラオラ系に変貌する事です。

 FDなので本編ではできないシチュを入れたいとはいえ、本編のメインヒロイン二人を同時に犯し、調教師まがいのセリフをぶつけたり、恋人の妹を犯したりとやりたい放題。当時の僕もプレイしながらランスシリーズと主人公を間違えているのではないかと、疑った程。

 とは言え、なんだかんだ大手の作品、CGなどは勿論一線級の出来ですし、要所要所に目を瞑れば、本編以上に感動する追加ヒロインのシナリオなども、ファンにはしっかり評価されています。

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 特に追加ヒロインである、メイドロボット「シルファ」シナリオは、可愛さや内容も非常に高水準で、何周も繰り返した覚えがあります。お陰で、シルファは今でも気に入っているヒロインの一人。

 因みにOVAシルファ回もお薦めです。ToHeart2OVAはどれもファンなら大満足の内容で、特にヒロインたちの中でも特殊な境遇である「草壁優季」をメインにした回は号泣モノ。ダンジョントラベラーズOVAでは、タマ姉が悪堕ちしてラスボスになったりと、シリーズならではのカオスな展開が愉しめます。

OVA「ToHeart2 adplus」スペシャルプライスDVD

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 閑話休題。このように「主人公の性格が前作と著しくズレている」など、繊細なエロゲユーザーが地雷認定する基準は様々です。個人的には、そういった騒動を含めてなんでも愉しめるようになりましたが、これは特殊な訓練の成果に近いスキルなので別です。

  さて、肝心の「THE地雷エロゲー」では、地雷ゲーの定義を以下の5つに絞っています。

 ・未完成品を発売してしまった!

 ・メーカーの力量不足だった!

 ・メーカーがド天然だった!

 ・完成品が予想の斜め上だった!

 ・こんなゲーム見たことない!

 

  実際に何百作もプレイしてきた、往年のエロゲーマーならば、何となく伝わってくる内容ではありますが、そうでない一般人からは余り想像できない定義ですね。折角なので、本書で紹介されている例と、個人的にその定義に適していると思う作品を挙げながら、簡単に解説していきます。

 

未完成で発売されたゲームたち

魔法少女アイ

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 このカテゴリの分け方はわかりやすいですね。単純に納期優先で、クオリティを重視せず発売してしまった作品たちですね。このジャンルだと誰もが最初に想像する魔法少女アイ参」を、本書でもトップバッターとして紹介されています。

 一応説明しておきますと、人気作の続編なのにCGが14枚しかなかった事や、本来CGが表示されていそうなシーンで画面が真っ黒なまま進むなど、誰が手にとっても未完成だと分かる内容でした。

 しかし、本書の良いところは悪戯にタイトルを並べていくだけでなく、愛を持って作品を紹介してくれるところ。魔法少女アイが、発売後にアペンドディスクにてCGやシナリオが追加されていった経緯なども解説されています。

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 著者もアイシリーズには色々な意味でお世話になったのでしょう、過去作や関連商品の紹介にはかなり熱が入っているのを感じます。特に、本作のキャッチフレーズとなった「ごらんの有り様Tシャツ」は僕も入手したかったです。著者ともども、アイにまた会える日を信じております。

 

・みずいろ

 他にも、ねこねこソフトの「みずいろ」も紹介されているのですが、これはクオリティが半端という訳ではなく、「アンインストールするとHDDの内容を全て削除してしまう」バグの存在が由来です。内容自体は僕も大好きな作品です。

 

 と言ってもこれは初回版だけですし、そこは常にユーザーを第一に考えるねこねこソフト、もし初回版を入手したとしても、公式のパッチを当てれば問題ないです。

 因みに、このねこねこソフトの過剰なまでのサービス精神は今も健在。

 いつの間にか延期しちゃっていましたが、「ラムネ2」は期待のタイトルです。

 

 要はゲームとして成立する容量でなかったり、デバッグが足りない故のバグが解決されていないなど、家庭用のゲームだと最低限のチェックに通らないような作品たちです。最近でも人気絵師を起用したのに、CG数が異様に少なく炎上した作品などもありました。

 本書には載っていない、当時未完成品として話題になった作品を一つ紹介します。

 

・よりしろ

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 内容はよくあるヒロイン育成ゲームなのですが、問題はことあるごとにコンパイルエラーが表示され、全然先に進めない事。他にもメイン原画の方と明らかに絵柄が違うCGや、印刷されているパッケージの定価が間違っているなど、数多くの問題を含んでいる作品なのですが、そんなこと些細な問題に感じる程のエラーの荒し

 挙句の果てにメーカーは夜逃げしてしまいます。

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 惜しむらくは、メイン原画の「maruku」先生によるCGやキャラデザが非常に魅力的なこと。褐色で巫女という、サムスピ世代狙い撃ちのような挑戦は、本来なら一部のユーザーから絶賛されていたでしょう。このパッケージ裏のCGも本編で殆ど表示されませんが。興味をそそられた方は、まだAmazonに一つ在庫が残っているので、伝説の未完成ゲームに挑戦してみるのも如何でしょうか?

 

 メーカーの力量不足が感じられるゲーム

  こちらは、やる気は感じられるものの、どうにもメーカーの力や経験が足りなかったと見えるゲームたちです。

戦極

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 このジャンルで真っ先に挙げられているのは、余りにバグだらけでユーザーにデバックさせているような状態になったSLG戦極姫」。有名なバグの一つに、告白シーンなど重要なシーンを、画面に残った丹羽長秀の他知恵が台無しにする上記画像のシャドーバグ。他にも多数のバグが存在します。

 しかし、最初はネットを阿鼻叫喚の渦に包んだ本作も、シリーズを重ねるごとに、操作性やシステムが改良されていき、今では多くのファンを獲得した人気作に。メーカーの努力が反映された貴重な例ですね。

 

 他にも、所謂「超空間ゲー」など(一部で)有名作が紹介される中、このジャンルで思い入れがある作品も載っていました。

 

・ガンガン生射ち!~お兄ちゃん、ボク、××しちゃう~

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 2003年のロリゲー。

 この作品の魅力は、何と言ってもどこか通常とズレた内容であり、例えば

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何故かヒロインが「冷凍みかん」を「冷蔵みかん」と呼び続けたり、画像のように立ち絵がCGを邪魔してくるなど、力量不足と天然のハイブリットのような作品。更には表示されているのに一つしかない意味不明な選択肢(そもそも強制なので選択も何もない)があったりと、多くの天然要素を感じさせつつも、可愛らしいぷにぷにした絵柄や、Acme(アクメ)というメーカー名から感じる、ロリっ子を孕ませたい情熱は本物を感じます。実は今作に孕ませ要素はないのですが。

 

メーカーがド天然な作品

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 メーカーが我道を行き過ぎる故に生まれた異色な作品たちです。

 例えば、えっちシーンでの比喩に枝豆のCGを採用した「JK辱処女」などの紹介が分かりやすいと思います。

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 先ほど紹介されていた「ガンガン生射ち!~お兄ちゃん、ボク、××しちゃう~」も、十分に天然な作品ではありますが、あちらはバグがあるので力量不足のカテゴリに入れた様子。

 

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 このカテゴリなら「ライアーソフト」の独壇場でしょう。本書でも、ヒロインに土下座して調教をお願いしていく意欲作「ANGEL BULLET」が紹介されています。それにしても、パッケージから伝わるキワモノっぽさと一際違う面白さは流石。

 

 ライアーソフトは01年の資料などを漁っても、当時から業界でも一目置かれていたのを確認できます。

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 ライアーゲームで僕と毒手!」という一文のセンスが良いですね。他にも紹介されていない、ライアーソフトが天然でやらかしているゲームと言えば、他にもまだ偉人女体化というジャンルが確立されていない時代に発売した「行殺❤新選組や、

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東京タワーにブルマを穿かせるという、大胆な発想をみせた「ぶるまー2000」なども有名ですね。そんなライアーソフトの新作も発売されるフェアリーテイルシリーズは、ライアーの尖った部分を、童話と特徴的な絵柄に落とし込んだ名作で非常にお勧めです。

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 完成品が予想の斜め上だった作品

 こちらは、当初期待していた内容から、良くも悪くも予想できない設定が出てきた作品たちです。例えば、まだ男の娘というジャンルが膾炙していない時代に、発売後にヒロインの一人が男の娘な事が発覚し、荒れるに荒れたゲームなど。

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 この文脈で三大電波ゲーも紹介されているのですが、あの辺はパッケージを見ただけで回避できるので、ちょっとカテゴリ的には違う気もします。それでも、あの三作品が現代の書籍で紹介されているのは貴重です。

  オマケですが、昔自分が書いた記事から更に、当時の資料を見つけたので貼っておきます。

 

  発売前から内容が予想できなかったという意味では、個人的に載せて欲しかった作品にネコっかわいがり!があります。

 

ネコっかわいがり!~クレインイヌネコ病院診療中~

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  発情期のネコ耳娘達と過ごす「13cm」によるほのぼの日常ゲーム。ではあるのですが、それはあくまで前半の内容

  トゥルールートでは穏やかな日常は一変、実はこの世界は動物に感染するウィルスによって犬やネコが死滅しているという設定が登場し、突然変異したウィルスは遂に人間にも伝染、ヒロインたちのネコミミは感染者の証拠である事が明かされます。

 「犬耳やネコミミが当たり前の世界」という前提で癒やされるためプレイしていたユーザーは、トゥルールートで起こる惨劇に唖然となりますが、それを踏まえた上でラストの構成は見事。プレイすると色々な意味で涙なしには語れない名作。あとはエンディングの作詞が「元長柾木」さんだったり。

 発売前のイメージから斜め上を突っ走った作品と言えば、この作品のためのカテゴリと言っても過言ではないでしょう。

  最近、本作品のAndroid版が配信されていますが、相変わらずストーリーの紹介は前半のみ。今でもこの作品の犠牲者を増やし続けているのでしょうか……。

ネコっかわいがり! (PARADIGM NOVELS (299))

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見たことない異色のゲームたち 

  本書で一番分かりやすいカテゴリであり、僕が最も好きなバカゲーなジャンルでもあります。著者も解説していますが、余りに自由過ぎる分、確かに軽い気持ちで購入したユーザーはついてこれないですが、内容的には十分な作品たちで、地雷ゲーとはまた少し違います。

  例えば「デブプラス」「女装山脈」など、タイトルから成る程と納得できる作品が多数載せられています。愛すべき意欲的な抜きゲーたちが、こういった形で書籍に載る機会は少ないので必読です。

  このカテゴリだと、僕は無限に紹介できるので、ここは今思いついた2作だけ紹介しておきます。

 

・彼女を寝取ったヤリチン男を雌堕ちさせるまで 

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 「ルネソフト」が打ち出した怪作。流行りに乗って「男の娘好き」を自称するミーハーたちを、一瞬で蹴散らせるパワーを感じます。

  本編でも「だって俺はこのチンポの彼女だしぃ❤」というパワーワードが、男性声優から発せられます。まだ未開拓のジャンルなので、この作品を皮切りに広まっていくと良いですね。

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 ・机乙女

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  解説するのも野暮なくらい、説明不要な圧力を感じさせる作品。意外にゲーム性があり、しっかりと作りこまれている分、なぜこんなゲームを作ったのか謎を加速させるお勧めの一作となっています。低価格帯ならともかく、これを6000円台で販売した勇気を称賛します。

 

 地雷ゲーができるまで

  「THE地雷ゲー」では、以上の5つに分けて、当時話題になった作品たちを多数紹介されています。この記事で載せた分もごく一部ですので、その充実っぷりとアダルトゲームの歴史を、是非ご自身の目で確かめて下さい。

  本書では、更に「エロゲの太陽」の作者である「はまむらとしきり」先生と「村正 みかど」先生との対談も載っており、実際にアダルトゲームを製作していたお二人ならではの視点から、地雷ゲーができるまでをじっくり解説しています。

  特に、お二人が関係している、頭文字Dが流行っているしアダルトゲームでやればウケるんじゃないかというコンセプトで企画された、萌えDこと「萌えろDownhillNight 」の裏話は必読。

 ゲーム性が強すぎると脱線してしまうため「エロゲーはゲームの面白さと両立できないのではないか」という話から、それは昨今のソシャゲも同じなのではと話が展開していき、読み応え抜群。

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 「エロゲの太陽」内でもソーシャルゲームに触れている回があります。

 さて、本題は「地雷ゲーができるまで」なのですが、ここで詳しく書いてしまうと本書を読む愉しみが減ってしまうため、かいつまんで簡単に。

 当然、メーカー側も狙って地雷ゲーを出している訳ではありません。どこがズレたゲームたちができる裏には「俺は本気でこれが抜ける」と信じるスタッフが居ます。他社と同じゲームでは売れないのがわかっている分、勝負に出ないといけない時があります。

 バグだらけのゲームにも、それまで必死に対応しようとはしたデバッガーたちの闘いがあります。

 予定されていた原画家と全く違うCGが表示される作品には、流通量の確保のため、見栄を張って会ったこともない原画家の名前を使うプロデューサーの無茶振りがあったりします。

 競争相手が少なかった十数年前と違い、アニメやソシャゲなどが登場した昨今ではどうしてもアダルトゲームというジャンルは厳しいそう。どんな地雷ゲーにもスタッフ達の葛藤やドラマがあります。「THE地雷ゲー」や「エロゲの太陽」は、そんな日の当たらない人間たちにスポットを当てた、大なり小なりエロゲーにお世話になったオタクたちが、今最も読むべき本なのかも知れません。

 

THE地雷エロゲー

エロゲの太陽(1) (ビッグコミックス)

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