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性欲の強いココアちゃんにリゼ先輩と千夜ちゃんをとられてシャロちゃんがひたすら曇っていく話

ごちうさ 創作・SS


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■性欲の強いココアちゃんにリゼ先輩と千夜ちゃんをとられてシャロちゃんがひたすら曇っていく話

 

「先輩、お暇なら日曜に映画とか行きませんか……? 先輩が好きそうな戦争モノの映画があるんですけど……」
 お嬢様風の癖毛をカールさせた金髪の少女は弱々しく、しかし熱意充分に訊いた。彼女は別にミリタリーなんてジャンルには興味が無い。本来なら歳相応に恋愛モノや話題作のホラーなんて洒落込みたい所だ。特に、今回は憧れの先輩を誘っている訳だから尚更。
 しかし、彼女──シャロが訊いた相手はそんな常識が通用する相手ではない。深い闇のような濃紺に染まったツインテールを揺らし、先輩──リゼは嬉しそうに答える。
「おっ、シャロもあの映画に興味があったのか! いいぞ、一緒に観に行こう」
「せ、先輩……!」
 予想通り、いや予想以上に乗り気なリゼの返答にシャロは恍惚とした。
 大好きな先輩の気を惹くために、全く興味のないジャンルの映画の上映スケジュールまで調べ、入念な下準備までしてきた甲斐があった。今週の日曜は人生で最も重要な日になる。シャロは確かな予感を覚えた。
………………
…………
……

 

 日曜。残念ながら空は曇り気味だったが、今のシャロにとって些細な問題だ。リゼ先輩と二人きりのデートに、小雨程度では障害にならない。たとえ台風がきたとしても上機嫌だっただろう。木組みの街を跳ねまわる野良ウサギ以上にシャロは浮かれていた。
「悪い悪い。待たせちゃったかな?」
「いっいえ。わたしもついさっき来た所でしたから……。それより先輩、今日はいつもより可愛らしい服ですね」
 当然この答えは嘘である。しかし、リゼが遅刻してきたわけではない。シャロが待ち合わせ時間の一時間前から待機したのだ。ただでさえ少ない生活費を更に削ってまで、手にしたデートのチャンスを遅刻などで不意にする訳にはいかない。
「最近こうして私用で外出することが無かったから、久々にオシャレしてみたんだけど……変、かな?」
「お似合いです。そろそろ時間ですので映画館へ行きましょう」
 お似合いです、に続けて「その格好を学校の皆に見られたら先輩を狙うライバルが増える程に」と続けようとしたのを飲み込んだ。どうせ鈍感な先輩には自分の気持ちはこんな遠回しでは伝わらないし、今はまだ伝わらなくて良いと思っているから──。


「映画とっても良かったな! 特に戦場で主人公がマシンガンを乱射してウサギたちを……」
「えぇ、一緒に観られて本当に良かったです。この半券は一生の宝物にします!」
 映画を観終えた二人は嬉しそうに笑っている。だが、昂奮したシーンを熱弁するリゼと違い、シャロが笑顔の理由は映画の内容に起因するモノではない。自分が誘った映画を観て愉しんでいるリゼを見ての笑顔だ。特に、普段はクールなリゼが、映画のテンションからか女の子らしいさくらんぼ味のジュースを飲んでいる事が可愛くて仕方ない。
(まるでデートしてるみたい……!)
 シャロのテンションはカフェインで酔った時以上にハイになった。自分で自分の気持ちの昂ぶりに驚くほどに。リゼへの気持ちが「憧れの先輩」なんて感情を越えてしまっている事に。
「せっ先輩、この後もお暇なら一緒にショッピングとか、その……前に偶然会った食器のお店とかどうですか?」
 行き先なんてどこでも良かった。ただリゼ先輩と二人の時間を一秒でも長く続けたかっただけ。この胸のトキメキを少しでも先輩に知って欲しいだけ。
 ──しかし、そんな彼女の至福の時間も長くは続かなかった。
「悪いな、シャロ。今日はこれから臨時でラビットハウスのバイトがあるんだ……」
「そうですか……。残念ですが今日はお開きにしましょう」
「ごめんな。映画愉しかったよ。また今度遊ぼうな」
 本当は引き止めたかった。しかし、シャロの期待を裏切ることへの申し訳なさそうな顔を見せられると、素直に見送るしかない。裏表のない先輩の困り顔は隠された優しさが透けて見える分卑怯だ。
「先輩、また学校で──」
 どうにか作った笑顔でリゼを送り出すと、人気のない物陰に隠れて、ちょっとだけ泣いた。
………………
…………
……

 夕食時のラビットハウス。隠れ家的な喫茶店であり、特に客の回転が良い訳ではないこのお店も、休日のディナータイムではそれなりに忙しく、一人では回せない程度には客がついている。
「ごめんね~リゼちゃん。チノちゃんが学校の行事で居ないから、急に呼んじゃって」
「遊んでただけだから別にいいよ。シャロにはちょっと悪いことしちゃったけど……」
「それよりリゼちゃん。そろそろ閉店でお客さん居なくなるから……」
 ラビットハウスの従業員の一人であるココアが、悩ましげな流し目でリゼを見つめる。その表情はまだ幼い故の危うさを秘めた、天然の色気が混じっている。
「ホントに、あんな事チノにやったら絶対ダメだからな……!」

…………………………………………………………
「んっ……あぁっリゼちゃんっ、リゼちゃん……!」
「ココアっ! ココアぁっっ……!」
 客の居なくなったラビットハウスの厨房。二人の少女は店員である事を忘れて、舌を絡めてお互いを確かめ合うのに夢中になる。
「ホントにっ……こんな事っ、チノにはっ、絶対……!」
 ひとつ上という立場上、飽くまでオトナな対応としてココアに接しているつもりだが、ココアと足を絡めているのはリゼの方からである。他の人にはするなという注意にも、他人にココアを盗られたくない独占欲が見え隠れする。
「あっ、んっ……れろっ……。リゼちゃん、大好き……」
 この関係の初めはココアが発端だった。勤務中にリゼと二人きりになったココアは、姉という立場上チノへは向けられない性欲のはけ口としてリゼを選んだ。
 リゼの方も求められて拒めるような性格ではない。寧ろ相手から迫ってくる事に悦びを感じている。「仕方なくココアの相手をしている」という態度を崩さないのも、自分が納得できる言い訳が欲しいだけだった。
…………………………………………………………
「それじゃあ、今日はもう上がるよ」
「お疲れ様、リゼちゃん! ていうか、1時間だけの臨時なのにこんなに引き受けてくれるなんて、そんなに私に会いたかったの?」
「バ、バカ! 別にそんなんじゃ……大した用事もなかっただけで……キスしたかったとかじゃ……」
「もうリゼちゃんったら分かりやすいんだから~♪」
「~~~~~~!」
 煙が出そうなほどに紅潮した頬を隠しながら退勤するリゼを見送る。
 オーナーであるタカヒロに見つかる訳にはいかず、時間の都合で情事の途中で帰した事に、性欲旺盛な年頃のココアは物足りない気持ちがあった。先程までリゼと粘膜を交換しあった舌の感触を確かめる。ミリタリー少女の唇は甘いチェリーの味がした。
………………
…………
……

 

(デートが中断されたの残念だったな……)
 一通り泣いたシャロはとぼとぼと帰路を歩く。まるで今の自分のようにどんよりした天気の空を見上げ、自嘲気味に力なく笑う。
 ふらふらした足取りながらも、馬小屋のような自宅の前まで着くと、いつもそこに居る筈の違和感に気づいた。
(あれ? 今日は珍しく千夜が居ないな)
 いつも通りなら、この時間はシャロ家の隣のお店である「甘兎庵」でのバイトが終わった千夜が、店の前で掃き掃除をしていて自分を出迎えてくれる筈である。別に普段それを意識した事がないが、今は少しでも哀しみを紛らわす話し相手が欲しかったため、少し残念だった。
(まぁあの子だって忙しい時くらいあるしね)
 シャロはお隣さんであり幼馴染である千夜からの好意には気づいていたが、リゼへの不満の穴埋めとして、彼女の気持ちを利用しようとする自分の卑しさには気づいて居なかった。また、千夜自体も自分がリゼの代わりとしてシャロを受け止めている事に気づいている事も。
 今夜はもう寝よう。月明かりに照らされたオンボロのベッドに横たわり、改めて少し泣いて、眠りについた。
………………
…………
……

 

「んっ……! 今日のココアちゃん積極的……何かあったの?」
 夜のラビットハウス。退勤したリゼと入れ替わりに入ってきた少女が訊く。ココアの部屋に飾ってあるチノと一緒に作ったボトルシップが揺れる。
「あっ、んっ……ぢゅるっ……。リゼちゃんにっ……半端にっ……焦らされちゃったから……でも千夜ちゃんが来てくれて助かったよ~」
 甘味処「甘兎庵」の次期社長──宇治松千夜の陰に、ココアの陰が淫らな形で重なっていく。千夜はココアが自分でなくリゼが相手でも良い事を知っていた。それでも彼女の愛を受け止めた。幼馴染である自分より学校の先輩を選んだシャロを通じて、都合よく利用される事に慣れていたから。
「千夜ちゃんっ……好きっ、好きだよぉっ……!」
 この歪な関係もココアから始まった。教室で常に二人一緒だった千夜を、いつしか抑えきれない性欲の処理相手に選んでしまう事は必定であり、時には夕陽が差す放課後の教室で、時には昼休みの中庭で二人はどんどん関係性に溺れた。
「千夜ちゃんもっ……今日はっ……いつもより激しっ……いねっ」
「れろっ……んっ……。ちょっとだけっ……嫌な事があったからっ……」
 ──シャロちゃんが嬉しそうにリゼちゃんとデートしてたから……。
 ラビットハウスの夜が更けていく。
………………
…………
……

 
「昨日は本当にごめんな。ココアが急にシフト入ってくれって頼んでくるからさ」
「もう良いんですよ先輩。それよりまた映画行きましょうね」
「あぁ、今度はココアたちも呼んで行こう!」
 分かっていたのにショックが大きかった。リゼ先輩にとって自分は友達の一人であって、昨日の映画館も二人きりのデートではなく、友達の一人と暇つぶしに遊んだだけ。覚悟はしていても、実際に言葉にされると年齢に恋愛経験が伴っていないシャロの胸ははち切れそうになる。
「私は今日もラビットハウスでバイトなんだが、シャロも今日はバイトか? 今日もココアと二人きりになりそうなんだ。アイツと二人きりだと騒がしくて仕方ないよ」
 いくら拙い恋愛経験とは言え、リゼを誰より見てきた恋するシャロの視点では、リゼがココアに友達以上の感情を抱き始めた事は丸わかりだった。そこまでは理解できてしまう故に、切っ掛けも過程も検討つかない事が辛い。
…………………………………………………………
 何と無く落ち着かない気持ちになり、他校で昼休みを満喫しているのであろう千夜にメールを送る。
 「相談したい事があるんだけど」意地っ張りなシャロの方から、こう言った申し出は珍しい。いつもなら千夜の方から気にかけてくれる筈。しかし、肝心の千夜と会う機会もなければ、いつもなら数分で返ってくるメールの返事も来なかった。
 幼馴染でも同じ高校ではない距離感が恨めしい。昨日と同じく曇りがちな空を見上げ、消え入りそうな声で呟く。
「しぇんぱい……千夜……」
………………
…………
……


 千夜とココアが通う女子トイレの一室。二人の少女は時間も場所も忘れて甘美な姦淫に浸っていた。
「ココアちゃっ……やめっ……シャロちゃんからメールがっ、きたからっ……!」
「だ~めっ! 今はシャロちゃんのことなんて忘れて私に集中して……」
 掛替えのない幼馴染のメールは、蕩けるようなキスの中で溶けて消えていった。
………………
…………
……


 薄暗いシャロの部屋。外はもう雨が降り始め、月の光は雲に隠れて傷心の彼女を照らしはしない。改めて見ると空虚な部屋だ。テレビもなければ流行りの少女漫画もない。まるで今の自分のように何もない。がらんどうなこの空間では、自分の嗚咽だけが虚しく響く。
 放課後になって千夜から帰ってきたメールは「今夜もラビットハウスへ行くから」という内容だった。
 ──何がいけなかったんだろう。千夜から送られる幼馴染以上の好意に気づきながらも、リゼ先輩を追いかけ続けた事だろうか。今になって幼馴染の大切さも、先輩と過ごした穏やかな日常の重さにも気づき始めてくる。
 
 ──カランカラン。
 甘兎庵の扉が開いた音が聴こえる。驚くほどにモノがないこの家では、隣人である千夜の生活音が丸聞こえだ。きっとあの子がラビットハウスから帰ってきたんだろう。愉しい愉しいココアとの時間を過ごして。

…………………………………………………………

 想像すると居ても立ってもいられなくなってきた。自分が何を求めているのか分からない。実際に会って何を話すべきかも考えていない。ただ少女は降りしきる雨の中、ラビットハウスへ向かって疾走する。
 躰を濡らす雨も、傘すら持たず一心不乱に走る少女に驚く人々の視線も関係ない。ただ、走る。息を切らしてようやく辿り着いたラビットハウスを前にしシャロは叫ぶ。
「ちょっとココアっ! 出てきなさいよ!」
 夜の来訪者に戸惑いつつも店から出てきたココアは、ずぶ濡れになったシャロの姿よりも、その鬼気迫る表情に驚いた。
「シャロちゃんどうしたの! 風邪引いちゃうよ!」
「そんな事どうだっていいのっ!」
 いつになく真剣な様子の友人にココアが動揺する。
「リゼ先輩もっ……千夜も……一体なにしたのよっ!」
 普段は察しの悪いココアも、シャロの悲痛の叫びを前に、何のことを話しているか瞬間的に理解する。
「そっか、シャロちゃん……」
 雨に濡れることも意に介さずココアがゆっくりとシャロに近づく。
「シャロちゃん寂しかったんだね」
「ちがっ……そんなんじゃっ!」
 シャロの言葉を待たずしてココアが強く抱きしめる。金髪少女の華奢な躰は、いともたやすく暖かな腕の中に包まれた。
「よしよし……。私ね、皆のことが大好きなの。リゼちゃんも、千夜ちゃんも。勿論チノちゃんもね。誰が一番なんか選べないよ。それに皆と仲良くしたいな」
「……」
「シャロちゃんの事も大好きだよ……」
 背中に回した腕で強く抱きしめ、震えるシャロの耳元にそっと囁く。
「ずぶ濡れになっちゃったね。シャロちゃん今日私の部屋に泊まりなよ。大丈夫、チノちゃんはもうすぐ眠り始めるから」
 その甘い甘いココアの香りがする声は、どこか悪魔の囁きにも似て背徳の味がする。シャロは返事の代わりにココアの躰をそっと抱き返した。それが何を意味するかをちゃんと理解して。
 ──あぁ先輩、千夜……。私も今そこに堕ちていきます。

 

 

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